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プロが教える!音がクリアじゃない時こころがけること

音楽制作やミキシングをしていると、「音がクリアじゃない」「なんかモヤモヤする」と感じる瞬間が必ず訪れますよね。せっかく良いメロディやアレンジを考えても、音がにごって聞こえるとリスナーの心に響きません。では、どうすれば音をクリアに、透明感のあるミックスに仕上げられるのでしょうか? プロのエンジニアが実践するテクニックを、以下の3つのポイントに絞って解説します。

  1. 時間軸をずらすor時間同じでフレーズを変える
  2. EQ→200〜300Hzに集まりがちだから分離
  3. 定位→内外、左右、前後の配置

これらのポイントを押さえることで、あなたのミックスが劇的にクリアになるはずです! 初心者から中級者まで、すぐに実践できる方法を詳しくお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでください。

1. 時間軸をずらすor時間同じでフレーズを変える

時間軸をずらす:音の衝突を避ける

音がクリアじゃないと感じる最大の原因の一つは、複数の音が同じタイミングで鳴っていることです。例えば、キックとベースが同時に鳴ったり、ボーカルとシンセが同じタイミングでフレーズを始めたりすると、音がぶつかって「にごり」の原因になります。これを解決する最初のステップが、時間軸をずらすテクニックです。

具体的な方法

  • キックとベースのタイミングを微調整
    キックとベースはリズムの要ですが、同じタイミングで鳴ると低域がぶつかり、音がぼやけます。例えば、キックのアタック(音の立ち上がり)を少し早くしたり、ベースのノートをほんの少し遅らせたりすることで、音の分離感が生まれます。DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)上で、ノートを数ミリ秒ずらすだけでも効果的です。
  • ボーカルと楽器のフレーズのタイミングをずらす
    ボーカルが歌い始めるタイミングと、シンセやギターのフレーズが重なると、ボーカルの存在感が薄れることがあります。ボーカルの入りを少し遅らせたり、楽器のフレーズをほんの少し早くしたりすることで、互いの音が際立ちます。リスナーは無意識に「主役」を感じやすくなり、ミックス全体がクリアに聞こえます。

時間軸をずらさない場合:フレーズを変える

時間軸をずらすのが難しい場合、例えば、曲のグルーヴ感を損ないたくない場合や、ライブ感を重視したい場合は、同じタイミングでもフレーズを変えることでクリアさを保てます。

  • 音域の棲み分け
    例えば、ボーカルが中域でメロディを歌っているとき、シンセが同じ中域で複雑なアルペジオを弾いていると、音が競合します。この場合、シンセのフレーズをシンプルにしたり、音域を高めにシフトしたりすることで、ボーカルとの住み分けができます。
  • リズムの変化
    リズムパターンも重要です。例えば、キックが4つ打ちで鳴っているとき、ベースが同じ4つ打ちで動くと単調でぶつかりがちです。ベースラインにオフビートやシンコペーションを加えることで、キックとのリズム的な分離が生まれ、音がクリアになります。

実践のポイント

DAW上で波形やMIDIノートを拡大して、タイミングを細かく確認しましょう。数ミリ秒のずれが大きな違いを生むこともあります。また、リファレンス曲を聴きながら、プロのミックスではどうタイミングを調整しているかを観察するのも有効です。クリアなミックスの曲(例えば、ポップやEDMのヒット曲)を参考に、キックやベース、ボーカルのタイミングを分析してみてください。

この「時間軸をずらす」「フレーズを変える」アプローチは、ミキシングの初期段階で意識することで、後々のEQや定位の処理が楽になります。まずは音の「ぶつかり」を減らすことから始めましょう!


2. EQ→200〜300Hzに集まりがちだから分離

200〜300Hzの「にごり」の原因

音がクリアじゃないと感じるもう一つの大きな要因は、200〜300Hzの帯域に音が集まりすぎることです。この帯域は、キック、ベース、ギター、ボーカル、シンセなど、多くの楽器が自然に持つエネルギーゾーンです。結果として、この帯域が過剰に重なると、ミックスが「モコモコ」したり「ボワッ」とした印象になり、クリアさが失われます。

EQで分離するテクニック

EQ(イコライザー)は、音の周波数を調整して各楽器の役割を明確にする強力なツールです。以下に、200〜300Hzを中心に、クリアなミックスを作るための具体的なEQテクニックを紹介します。

1. 優先順位を決める

まず、どの楽器をこの帯域で「主役」にしたいかを決めます。例えば、ポップスならボーカル、ダンスミュージックならキックやベースが主役になることが多いです。主役の楽器はこの帯域をしっかり確保し、他の楽器は少し削ることで、音のぶつかりを防ぎます。

  • ボーカルを主役にする場合
    ボーカルの200〜300Hzを少しブースト(+2〜3dB程度)して存在感を強調し、ギターやシンセのこの帯域をカット(-3〜5dB程度)します。カットの際は、Q値を狭くしてピンポイントで削ると自然です。
  • キックやベースを主役にする場合
    キックの「胴鳴り」やベースの「温かみ」を強調するために、200〜250Hzを少しブースト。一方、ギターやボーカルのこの帯域を控えめにカットします。

2. サブトラックEQで全体を整理

個々のトラックだけでなく、バス(グループ)トラックにもEQを適用することで、全体のバランスを整えられます。例えば、ドラムバスや楽器バスの200〜300Hzを軽くカットすることで、ボーカルやリード楽器が際立ちやすくなります。

3. ダイナミックEQで賢く処理

200〜300Hzが常に問題になるわけではありません。特定のフレーズやパートで音がぶつかる場合、ダイナミックEQを使うと効果的です。ダイナミックEQは、特定の周波数が過剰になったときだけ自動的にカットしてくれるので、音の自然さを保ちつつ、ぶつかりを防げます。例えば、FabFilterのPro-Q 3やWavesのF6のようなプラグインがおすすめです。

注意点:やりすぎない

200〜300Hzを過剰にカットすると、音が「薄く」なったり「冷たく」なったりすることがあります。カットする量は-3〜6dB程度にとどめ、ブーストも控えめに(+2〜4dB程度)しましょう。また、ソロで聴かないことも重要です。個々のトラックをソロでEQするとバランスが崩れがちなので、必ずミックス全体を聴きながら調整してください。

実践のポイント

  • リファレンス曲を活用:クリアなミックスで知られる曲をDAWにインポートし、スペクトラムアナライザーで200〜300Hzの分布を確認。自分のミックスと比較しながら調整すると、プロのバランスに近づけます。
  • 耳を鍛える:200〜300Hzの「にごり」を聞き分けるには、練習が必要です。EQでこの帯域をブーストしたりカットしたりして、音の変化を意識的に聴き比べましょう。

EQを適切に使うことで、200〜300Hzの「にごり」を解消し、各楽器がクリアに聞こえるミックスに仕上げられます。


3. 定位→内外、左右、前後の配置

定位で「空間」を作り出す

音がクリアに聞こえるミックスは、空間的な広がりが鍵を握ります。すべての音が同じ位置に重なると、ミックスが平面的で窮屈に感じられます。そこで、定位(パンニングや奥行きの調整)を活用して、音を「内外」「左右」「前後」に配置することで、立体感のあるクリアなミックスを作りましょう。

左右の定位(パンニング)

パンニングは、音を左右に振ることで空間的な分離を作る基本テクニックです。

  • 低域はセンターに
    キック、ベース、スネア、ボーカルなど、ミックスの「核」となる音はセンターに配置するのが基本です。低域はモノラルで聴かれることが多い(特にクラブやライブ環境)ので、左右に振るとバランスが崩れます。
  • 楽器を左右に振り分ける
    ギター、シンセ、パッド、バッキングボーカルなどは、左右に振って空間を作ります。例えば、ダブルトラックのギターを左に70%、右に70%に振ると、ワイドなサウンドに。同じく、シンセのアルペジオを左に、ストリングスを右に配置することで、音のぶつかりを防ぎ、クリアさを保てます。
  • ステレオエフェクトを活用
    ステレオイメージャー(iZotope Ozone Imagerなど)を使って、楽器のステレオ幅を広げるのも有効。ただし、やりすぎると位相の問題(モノラルで聴くと音が消えるなど)が起きるので、モノラルチェックを忘れずに。

前後の定位(奥行き)

音の「前後」をコントロールすることで、ミックスの奥行きが生まれ、リスナーに立体感を与えられます。

  • リバーブで奥行きを作る
    リバーブは音を「遠く」に配置する効果があります。例えば、ボーカルを前にしたい場合はリバーブを控えめに、バッキングボーカルやパッドを奥にしたい場合はリバーブを強めに設定。リバーブのプリディレイ(音が鳴ってからリバーブが始まるまでの時間)を調整することで、距離感を細かくコントロールできます。
  • ディレイで空間を演出
    ディレイも奥行きを作る強力なツールです。短いスラップディレイ(50〜100ms)は音を少し後ろに、長いディレイ(1/4拍や1/8拍)はさらに遠くに感じさせます。ボーカルに軽いディレイを加えると、存在感を保ちつつ空間的な広がりが生まれます。
  • ボリュームとEQで前後感を調整
    前にしたい音はボリュームを上げ、中高域(2〜5kHz)を少しブースト。奥にしたい音はボリュームを下げ、低域や高域を控えめにすると、自然な奥行きが生まれます。

内外の定位(音の「包まれ感」)

リスナーに「音に包まれる」感覚を与えるには、内外の定位を意識します。これは、音を「リスナーの近く」または「周囲に広がる」ように配置するテクニックです。

  • モノとステレオの使い分け
    ボーカルやリード楽器はモノラルでセンターに配置し、リスナーの「近く」に感じさせます。一方、ストリングスやアンビエントなパッドはステレオで広げ、「外側」に配置することで包まれ感を演出します。
  • オートメーションで動きを
    曲の展開に合わせてパンニングやリバーブをオートメーションで動かすと、ダイナミックな空間が生まれます。例えば、サビでボーカルのリバーブを増やして「広がり」を強調したり、ブリッジでシンセを左右に動かしたりすると、ミックスに生命感が加わります。

実践のポイント

  • モニター環境を整える:定位を正確に判断するには、モニタースピーカーや高品質なヘッドフォンが必須です。部屋の反響やスピーカーの配置にも注意しましょう。
  • モノラルでチェック:ステレオで広がりを作った後、モノラルでミックスをチェック。モノラルでバランスが崩れる場合は、定位やステレオ幅を調整し直します。
  • リファレンス曲で確認:プロのミックスを参考に、どの音がどこに配置されているかを分析。EDMならキックのセンター感、ポップならボーカルの前後感を特に注意して聴いてみましょう。

定位を工夫することで、音が互いに干渉せず、クリアで立体的なミックスが完成します。


まとめ:クリアなミックスへの3ステップ

音がクリアじゃないと感じるとき、以下の3つのポイントを意識すれば、プロのミックスに近づけます。

  1. 時間軸をずらすorフレーズを変える:音のぶつかりを防ぎ、各パートの存在感を明確に。
  2. EQで200〜300Hzを整理:にごりの原因となる帯域を分離し、バランスを整える。
  3. 定位で空間を作る:左右、前後、内外に音を配置し、立体感のあるミックスに。

これらのテクニックは、DAWやプラグインがあればすぐに試せます。まずは自分のミックスで「にごり」を感じる部分を特定し、1つずつアプローチを試してみてください。リファレンス曲を活用しながら、耳を鍛えることも忘れずに!

クリアなミックスは、リスナーの心をつかむ第一歩。あなたが作る音楽が、より多くの人に届くように、この記事が役立てば幸いです! ぜひ実践して、プロレベルのサウンドを目指してください。


次回は

プロが教える!DTM生活心得:効率よくクリエイティブに曲を作る5つのコツ

をお送りします!!

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