ジョニー・デップ主演・製作の映画『MINAMATA―ミナマタ―』(2020)は、実在の写真家ユージン・スミスを描いた伝記ドラマです。アマプラで有料だったのでストーリーを細かく教えて。
映画『MINAMATA―ミナマタ―』は、水俣病の惨状を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスの魂の闘いと、彼を支えた人々、そして水俣の住民たちの勇気を描いた重厚な人間ドラマです。
ストーリーの細部を順を追って解説します。
1. 落ちぶれた天才写真家への依頼
1971年のニューヨーク。かつて「ライフ」誌などで輝かしい功績を残したフォトジャーナリスト、ユージン・スミスは、今や酒浸りで孤独、借金に追われる日々を送っていました。
そんな彼のもとに、アイリーン(後に彼の妻となる女性)と日本人通訳者が訪ねてきます。彼女たちは、日本の九州にある水俣市で起きている、チッソ工場による水銀汚染公害「水俣病」の実態を世界に伝えてほしいと懇願します。
最初は拒絶していたユージンですが、自身のキャリアの最後を飾る仕事として、また写真家としての良心に突き動かされ、水俣へ向かう決意をします。
2. 水俣での衝撃と葛藤
水俣に到着したユージンを待っていたのは、手足が不自由になり、激しい痛みに耐える患者たちの姿でした。彼は当初、そのあまりに過酷な光景にシャッターを切ることをためらいます。
- 住民の不信感: 外部の人間であるユージンに対し、一部の住民は冷ややかでした。
- チッソの妨害: 巨大企業であるチッソは、金銭での解決を提示したり、時には暴力的な手段でユージンの取材を阻もうとします。
しかし、患者の家族や支援者たちの必死な姿に触れるうちに、ユージンは「自分にできることは、この真実を記録することだけだ」と確信し、カメラを手に取ります。
3. 暗室の火災と絶望
取材が進む中、ユージンが滞在していた自宅の暗室が、チッソ側の息がかかった者たちによって放火されてしまいます。これまで撮りためた貴重なネガの多くが焼失し、ユージンは深い絶望に打ちひしがれます。
しかし、住民たちは諦めませんでした。彼らはユージンを励まし、再び立ち上がらせます。ユージン自身も暴行を受け、片目の視力をほぼ失いかけますが、それでもなお撮影を続けます。
4. 歴史的な一枚「入浴する智子と母」
映画のクライマックス、ユージンはある家庭を訪れます。そこで目にしたのは、水俣病によって重度の障害を持つ娘・智子を、慈しむように抱いて入浴させる母親の姿でした。
ユージンは、その神々しくも悲痛な光景にカメラを向けます。
「写真は撮るものではない、(被写体に)与えられるものだ」
という信念のもと、彼は静かにシャッターを切ります。この写真こそが、後に世界を震撼させることになる『入浴する智子と母(Tomoko in Her Bath)』です。
5. 結末:世界への訴え
1972年。ライフ誌に水俣の特集が掲載されます。ユージンの写真は世界中に大きな衝撃を与え、水俣病問題は国際的な注目を浴びることとなりました。
映画のラストでは、チッソとの裁判に挑む住民たちの姿と、その後のユージンとアイリーンの歩みが語られます。エンドロールでは、世界各地で起きた(あるいは現在進行形の)様々な公害や環境破壊の事例が映し出され、この物語が単なる過去の出来事ではなく、現代にも続く警鐘であることを示唆して幕を閉じます。
作品の見どころ
- ジョニー・デップの怪演: 特殊メイクを施し、気難しくも人間味あふれるユージン・スミスを熱演しています。
- 日本俳優陣の存在感: 真田広之、國村隼、浅野忠信、加瀬亮といった実力派が、重みのある演技で物語を支えています。
- 坂本龍一の音楽: 静謐で心に染み入る劇伴が、水俣の風景と人々の感情を際立たせています。
非常に重いテーマですが、一人の写真家が再生し、人々が尊厳のために闘う姿を描いた希望の物語でもあります。